知らぬ怖さ
急激な大雪(予報はされていました)で渋滞が続き、遅いところでは明日の午前中までとのこと。
五十年以上前、雪深い故郷の隣町まで父とケーキを買いに出かけました。
雪質の軽いパウダースノー、地吹雪の恐ろしさはその地域に住んでみなければわかりません。
唯一の趣味が車、ドライブ好きも父に似たのかもしれません。
人生で出会う人から自分にない知恵を貰い、その対価は必ず払い踏み倒してはいけない、教えてくれたのは祖父母でした。
ケーキを買いに出かけた吹雪、フロントガラスに大粒の雪がふんわりライトに照らされ綺麗でした。
真っ暗闇を照らすライトが頼り、しかし降雪量が半端じゃなく、行くも戻るもできない….孤立というのはこんなに恐ろしいものかと。
エンジンを止め、寒いのに車の窓を少しだけ開け、急いでトランクから様々な道具を取り出し、赤いキレを伸ばしたアンテナの先に取り付けました。
後部座席の間へ荷物を詰め込み、毛布を上下に広げグルグルと薄綿布団に包んだ湯たんぽを二人の間に置いてくれました。
冬場の馬に着せる帆布を手縫いで繋ぎ合わせた、凍結防止を全部の窓へ取り付けていました。
きっと命の危機が迫っていたのでしょうが、父の道具捌きと工夫、恐怖よりも父が与えてくれた安心の大きさを覚えています。
大きな水筒も二つあり、ひとつは暑い湯を入れグルグル巻き、真っ暗のなかカンテラをつけ買ってきたケーキを食べることになりました、仁丹粒のような飾りがついたバタークリームの薔薇の花♪
アルミの弁当箱を広げ、蓋はお皿、いくつにも切った晒しの布、洗濯石鹸のようなものが油紙に包んである、ピンセットや小さなハサミ、マッチ箱など私にとっては宝箱に見えたものです。
窓の隙間から雪を少し、小さな石鹸のかけらで手をゴシゴシ、晒しで拭いていよいよケーキです。
ローソクが灯り、父の顔をこんなに近くで見れたのも最初で最後、半分は神様と仏様へ残し…
いつしか雪も止んで、帆布の間から宝石のような星が輝き、ジョリっと伸びた髭がほっぺたをスリスリ。
やがて朝になり「おーい!!団長、大丈夫ですか」の声で目が覚め、雪かきの大きな除雪機を先頭に指揮を取っている父。
早くから車の周囲をスコップで広げ、雪の上で火を焚き(オイルのついたボロ切れ)無線連絡をしていたそうです。
夜中の救援は危険なので待機指示をしていたとのこと。
除雪車の後ろを赤い布をつけ、ゆっくり運転する父が誇らしかったです。
何もない時、人様は父のことを変わり者と指差し、恥ずかしいと思ったこともありましたが、七十近くになっても父を誇りに思う、生涯父を超える恋人はいないでしょうね(笑
年齢と共に伝える内容も、身もほどほど、口もほどほど、意はまだまだと変化して行かなければと、厳冬の父へ合掌です。
四季に応じてのいざという時のライフライン、もう一度見直してみませんか。
コメント ( 2 )
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こんにちは。今回の大雪に見舞われたニュースで以前読んだ住職のお話を思い出していました。塩沢石打インターはいつも日帰りスキーでお世話になるところです。長い人で四十五時間動けなかったそうですね。自衛隊も出動するほどの大雪、取り残された人達の不安は想像を絶します。こんなピンチをチャンスに変える住職のお父様はそりゃカッコイイですよ!普段からの準備の大切さを教えていただきましてありがとうございます。自分も日々精進します(^^;
座敷オヤジさん こんばんわ 様々な経験を積み、色々な方々とご縁をいただき、知らないことを知るってワクワクしますね。もちろん、お叱りもたくさんありますが、皆さんと同じ時間を生きているだけでも嬉しいです。座敷オヤジさんも子供さんから信頼されているお父さんだと思います、二人とも言葉が少なくても労る優しさを持っていますね。知識と経験を楽しくチャンスに変えるのには、工夫の楽しみがあるからでしょうね。冬のキャンプ写真を拝見したとき、テンガロンハットがよく似合いお洒落も素敵でしたよ。いつか夜空が綺麗なテントサイトでご一緒したいです(*^^*)