お盆とテラのこと

縁者のご先祖様、お盆の迎え火も灯してもらえない才太郎畑の亡者の方々も、この期間はとても嬉しく待ちわびておられます。

もちろんお申し込みの方々の提灯にも、ひとつひとつにお名前が記されており、思いやってくださるそのお心が何より。

アパートやマンション、お家の前で火を灯せない方々のため、迎え提灯をお寺の境内地にて灯しております。

不思議な力を持つ犬を「霊犬」あるいは猫を「霊猫」と呼ばれてきました。

当寺の歴代の犬たちにはなかったパワーを持ち、様々な奇跡と思われるようなことを経験させてくれました。

特にお盆入りの迎え提灯のときは、集まり来る魂たちを間違わないよう、本堂横からお迎えです。

こっちからくるかな….、見逃さないため緊張している様子

 

あっ!!

ちたー!!

こっちだよ〜と言わんばかりのお出迎え

提灯がなくて困っているものを見つけ、走り出すことも度々….

実はテラの走る先は崖っぷち、それでも健気に駆けていこうとします。

そういうものにも、ごゆっくりしていただきたい….

私も境内地へ集まってきた見えなきものたちと、本堂の御本尊様の元へとお招きいたし全国より届けられたん供物を召し上がっていただきます。

テラはなぜかお地蔵様参りを日課としており、特別なしつけをしたわけでもなく、ある日のこと本堂前からテコでも動かなくなったのです。

お不動様のご縁日のこと、普段鳴かないテラが南の方へ向かい激しく切なく吠え、一頭のやせ細った飼い犬であっただろう老犬の柴犬が穴に捨てられていたのです。

目も見えず長い爪、首輪の跡が擦り切れ….

救い出すも怖い思いをしたのでしょう、息も絶え絶えの状況なので医師を呼ぶことにしました

「治療を施しても一月持つか、高齢ですし飼い主がいないので費用はどうしますか?」

まだ、幼いテラが私の顔を覗き込み、返答を急かすのです。

犬一頭を飼うということは、老犬であろうが責任の重いこと、さらに高齢であることから医療費が半端じゃない額であること….

首輪をつけた捨て犬、子猫や親猫・フェレットからいろんな生き物をお寺だから救うのは当然のようなことをおっしゃる方がいます、ところが首輪をつけていれば迷子犬かもしれないと届ければ、犬も猫も拾得物扱いなので期限が決められ、その間に飼い主が来てくれないと殺処分になります。

また、大怪我をしている場合、獣医へ連れて行っても手術をしてあげることができないのです、半年間の間は飼い主の許可がないとできない、しかし、山には引越しシーズンや行楽シーズンになれば何十頭どころの話じゃありません。

全部の命を救うためどうしたらいいのか悩みました、届ければ一週間という命に限りがつけられる、かといって全てを飼育できるほどの経済力もなく、結果お山の神様とその子たちの生き延びる力を信じ、人に近づかないよう願うしか私にはありませんでした。

お寺というところは人が多く集まり、犬アレルギーや猫アレルギーの方、老齢から赤ちゃんもお参りできるところ、檀家のないお寺ですからみなさんの支援がなければ成り立たず、途中で経済的に困難となり手放すとなれば捨てた人々と何ら変わらない。

テラは自分の身の上に重ねたのでしょうね、「トモ」と名付けられた老犬を最後として治療を開始、ひと月が三年と少し長生きをしてくれました。

ご参詣のない時間帯をテラとトモちゃん、目が見えずヨロヨロし今にも倒れそうなトモちゃんを支えるよう寄り添い、少し走れるようになればテラへいろいろ教えてくれている姿がありました。

そして、ある年の業厄払いを終えた夕方、車から降りたテラが座り天に向かって初めて遠吠え、その目には大粒の涙の筋ができていました。

トモちゃんが旅立った翌日から本堂前から動かず、戸を開けるとお地蔵さんの前に十分ほど座りの毎日、現在の地蔵堂が建立されてからはそのお堂の前へ参るようになりました。

そしてテラも旅立ち、多くの動物さんとともに地蔵堂横の「約束」のうてなから、参る人々をお地蔵様と一緒にお守りし、朝夕は仲間たちと仲良く野山を駆け回っております。

犬は3日飼われたら恩を忘れずと申します、盆と正月・春秋彼岸くらいでも思い出し灯りのひとつくらい供えてあげても、バチは当たらないと思うのです。

ましてや自分の命を産み育ててくれた親や親族、縁者へ感謝できるよう心がけたい、そういう心根があれば捨てる人もいなくなるのではと、堂守をさせていただきながら、私らしいご供養や山番を続けさせていただいております。

才太郎畑の数が増えるなか、一粒の水となりお役に立てるよう、縁側説法や行事を通じお話ができればと思うところです。

長文をここまで読んでいただき、ありがとうございます、心の防災となれば甚だ幸いです。